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ArtTechトレンド|VRからMRへ―上海で体験したMixWorldの新しい没入型アート

10月21日
読了時間: 8分

更新日:10月22日


今回は、中国で展開されているMR(Mixed Reality:複合現実)体験プラットフォーム「MixWorld」を上海で体験してきたので、レポートさせていただきます。


2024年に上海を訪問した際にも、VR技術を利用したパリ・ノートルダム大聖堂のバーチャルツアーを体験しました。


今回のMixWorldは、その時とは異なるMR技術を活用したもので、特に映像の美しさ、音響、そして現実空間から仮想空間へと切り替わる没入感が印象的でした。


VRとMRは何が違うのか、そして、こうした技術が今後のアートや文化施設にどのような可能性をもたらすのか、実際の体験を通じて考えてみたいと思います。


1.MixWorldとは

MixWorldは、Apple Vision Proを活用したMR(Mixed Reality:複合現実)体験プラットフォームです。


MRとは、現実の空間とデジタル映像を融合させ、利用者が実際の環境の中で仮想オブジェクトを見たり、操作したりできる技術です。


MixWorldでは、空間コンピューティング技術を活用し、歴史・文化・アートとデジタル技術を組み合わせた没入型コンテンツを提供しています。


代表的な作品が、東洋の古代文明や神話、SFの世界観を取り入れたMRコンテンツ「無象之境」です。


古代文明の遺跡や神秘的な世界、恐竜、宇宙などをモチーフにしたデジタル空間が広がり、体験者はその中を移動しながら、さまざまな映像演出やインタラクションを楽しめます。


現在、中国では上海の体験施設をはじめ、商業施設や文化施設などで展開されており、南京図書館やマカオ科学館でも展示が行われています。


今回は、上海のMixWorld数字未来体験センターで、実際にゴーグルを装着して体験してきました。


【紹介動画:MixWorld数字未来体験センター】


2.2024年に体験したVRとの違い

① パリ・ノートルダム大聖堂のVR体験

2024年に上海を訪問した際には、「永遠のパリ・ノートルダム大聖堂(永恒的巴黎圣母院)」というVR体験型展示を訪れました。



この展示は、中仏国交樹立60周年を記念して上海展覧中心で開催されたもので、2019年の火災で大きな被害を受けたノートルダム大聖堂を、3Dスキャンなどの技術を活用してデジタル空間に再現したものです。


来場者はVRゴーグルを装着し、実際には立ち入ることが難しい大聖堂の内部や鐘楼などを巡りながら、その建築や歴史を体験できます。


当時使用されていた機器は、HTCの「VIVE Focus 3」です。

現実の建築物を精密に再現し、その空間を自由に歩いて鑑賞できることが特徴でした。


また、当時の会場では、壁や床に白黒の幾何学模様が描かれていました。


今回改めて調べてみると、この模様は単なる装飾ではなく、VR機器が利用者の位置や動きを認識しやすくするための仕組みだったことが分かりました。


一方、今回のMixWorldでは、このような特殊な模様で覆われた専用空間は必要なく、通常の展示空間を活かしたMR体験が提供されていました。


こうした違いからも、技術の進化だけでなく、展示空間の設計や活用方法が変わってきていることが分かります。


【写真:2024年体験時の写真】


当時も十分に興味深い体験でしたが、今回のMixWorldでは、それとは異なる技術的な進化を感じました。


② 現実空間からデジタル空間への自然な移行

今回の体験で最初に印象に残ったのが、現実空間と仮想空間の切り替わりです。

Apple Vision Proを装着すると、最初はカメラを通じて周囲の現実空間が見えています。


そこにデジタル映像が現れ、次第に周囲の空間が幻想的な世界へと変化していきます。

従来のVRが、現実とは切り離された仮想空間に入り込む体験を中心としていたのに対し、今回のMRでは、現実の空間と仮想の世界が連続しているように感じられました。


特に面白かったのは、実際の会場に展示されているアート作品を見ていると、その作品がデジタル映像の中で動き出す演出です。


目の前に存在する作品が、デジタル技術によって別の姿を見せ始める。

単に映像を鑑賞するのではなく、現実の展示作品が新たな世界への入口になるような体験でした。


③ 映像と音による360度の没入感

もう一つ印象的だったのが、映像の美しさです。


今回使用したApple Vision Proは、高解像度のディスプレイや空間認識技術を搭載しており、細部まで鮮明な映像を表示できます。


実際に体験すると、仮想空間の奥行きや立体感が非常に自然で、特に空を見上げた際には、自分が巨大な空間の中に存在しているような感覚がありました。


左右だけでなく、上を見上げてもデジタル空間が広がっているため、周囲360度の世界に包み込まれるような没入感があります。


また、音響も優れていました。

映像だけでなく、周囲の空間から聞こえてくるような音の広がりがあり、視覚と聴覚の両面から仮想空間への没入感を高めていました。


2024年に体験したVRと比べても、今回は映像・音響ともに完成度の高さを感じました。

もちろん、これは機器の性能だけでなく、コンテンツの制作技術や演出の違いも大きいと思います。


④ 自分の手でデジタル空間に参加する

さらに興味深かったのが、仮想空間に存在するアイテムを、自分の手を動かして取得できる仕掛けです。


Apple Vision Proは、視線や手の動きを認識する技術を備えており、専用コントローラーを使わなくてもデジタルコンテンツを操作できます。


今回の体験でも、目の前に現れるアイテムに対して自分の手を動かし、取得するという操作がありました。


こうした仕組みによって、利用者は単に映像を見るだけでなく、作品世界に参加することができます。


ここに、従来の映像鑑賞とは異なる可能性を感じました。


【写真:上海のMixWorld体験施設】


⑤ VRとMRで使用される機器の違い

今回の体験の違いを理解するうえで、使用する機器の特徴も重要です。

2024年のノートルダム大聖堂の展示では、HTC VIVE Focus 3が使用されていました。


一方、今回のMixWorldでは、Apple Vision Proが使用されています。

両者はともにゴーグル型のディスプレイを装着して仮想空間を体験する機器ですが、それぞれに特徴があります。

比較項目

2024年のVR体験

今回のMR体験

使用機器

HTC VIVE Focus 3

Apple Vision Pro

主な体験

再現された仮想空間を探索

現実と仮想空間を融合

映像

3D再現された建築空間

高精細な仮想映像と現実空間

操作

移動や仮想空間内での操作

視線や手の動きを利用

空間認識

カメラで周囲の特徴や模様を認識

カメラ・センサーで周囲の空間を認識

会場の特徴

壁・床の幾何学模様で位置認識を補助

特殊な模様を設けず、既存の展示空間を活用

特徴

歴史的な建築物を仮想空間で体験

現実の展示とデジタル世界を連動

※この比較は、実際に体験した2つの展示方式について整理したものです。すべてのVR・MR機器に共通する違いではありません。


なお、VRとMRの違いは機器だけで決まるものではなく、コンテンツの設計や、現実空間をどのように利用するかによっても変わります。


今回のMixWorldで特に魅力を感じたのは、Apple Vision Proの性能に加えて、現実の空間から仮想の世界へと自然に入り込ませる演出や、体験者自身が参加できる仕組みでした。


3.まとめ―MR技術が広げるアート・文化体験の可能性

日本でも、チームラボのデジタルアートやプロジェクションマッピングなど、現実空間とデジタル技術を組み合わせた体験型コンテンツが広がっています。


こうした展示では、建物の壁や床、光、映像などを利用し、現実の空間そのものを作品の一部として演出しています。


一方、今回体験したMR技術は、ゴーグルを通じてデジタル空間を構築するため、物理的な展示物や建築設備に依存しない表現を生み出せる可能性があります。


例えば、実際には再現が難しい巨大な建築物や古代文明の世界、宇宙空間なども、デジタルコンテンツとして展開できます。


また、既存の文化施設に展示されている作品と組み合わせることで、現在の展示空間に新しい鑑賞体験を加えることも考えられます。


もちろん、ゴーグルの導入費用や装着時の快適性、施設運営などの課題はあります。

それでも、今回の上海での体験を通じて、中国におけるデジタルコンテンツ制作技術の進歩の速さを改めて感じました。


特に印象的だったのは、仮想空間の映像を鑑賞する段階から、その空間の中で作品と関わり、自ら参加する体験へと進化していることです。


アート作品や文化財の鑑賞方法を広げるだけでなく、美術館・博物館、商業施設、観光施設などに、新しい体験価値を生み出せる可能性があります。


今後の発展に期待したい技術の一つだと感じました。


4.ArtTech Consultingでの日本展開について

ArtTech Consultingでは、今回ご紹介したMixWorldの日本向けの提供を開始しました。

既存のMRコンテンツの活用に加えて、地域の歴史や文化、施設の特徴などに合わせたオリジナルコンテンツの開発にも対応可能です。


美術館・博物館、商業施設、観光施設、各種イベントなどでの活用を想定しています。

また、MixWorldの技術的な特徴、コンテンツ、中国での導入事例などをまとめた日本語紹介資料もご用意しています。


MR技術を活用した新しい文化体験や事業企画にご関心のある企業・施設担当者の方は、ぜひお問い合わせください。


参考資料

※MixWorldの概要および導入事例は提供元資料などに基づいています。MR体験に関する評価・感想は執筆者個人の体験によるものです。

 
 
 

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