ArtTechトレンド|美術館のAI活用事例―東京藝大が行う「鑑賞者の言葉」の分析
更新日:9月7日

東京藝術大学大学美術館で開催されている企画展「藝大式 美術の“ミカタ” ―この夏、藝大生になる―」を訪れました。
本展は、東京藝大の授業を美術館展示として体験する企画で、美術史、実技、鑑賞、素材、保存修復などを、大学所蔵の実作品を通じて学べる構成です。
「本物から学ぶ」東京藝大
今回特に印象に残ったのは、過去の偉人や実際の作品から学ぶことを重視している点でした。
黒田清輝が西洋画を模写した作品から学んだり、国宝絵巻の模写、仏像の模刻を通じて保存修復を学んだりと、先人がどう見て、どう作り、どう表現したのかを実作品から学ぶ内容が多く見られました。
私は京都芸術大学で、主に美術やデザインの歴史的な流れ、社会との関係、アートに対する考え方などを学んでいます。
それと比較すると東京藝大は、
作品を見る
→ 作り方や考え方を知る
→ 自分はどう感じるか考える
→ 自分の言葉や作品に表現する
という、制作者視点での学びを重視しているように感じました。
国宝や歴代作家の作品を含む豊富な所蔵品を持ち、本物から学べる環境そのものが大きな強みだと思います。
AIで「アートの見方」を分析
ArtTechの視点で特に興味深かったのが、2022年に新設された東京藝術大学未来創造継承センターによる「クリエイティヴ・アーカイヴ演習」です。
作品を見たり素材を体験したりした際に感じた言葉を入力し、それをAIで分析。鑑賞者が作品のどこに注目しているかを可視化します。
私も漆芸作家・青木宏憧氏の作品《守箱》を鑑賞した後、

「漆塗り」「お尻」「お弁当」
という3つの言葉を入力したところ、結果は
「修復家タイプ」
でした。
(診断結果)

材料や技法、作品の傷みや変化などに注目するタイプとのことです。
正直、私は作品の制作技法から理解することはあまり得意ではありません。
一方で、「なぜこの状態なのか」「なぜこの形なのか」と、作品に残された手掛かりから考えることは多いので、その部分が反映されたのかもしれません。
さらに会場では、訪問時点で回答者数5,203人と表示され、
作品からどのような言葉が生まれたか
どの「ミカタ」が多いか
年齢層による違い
鑑賞前後で言葉がどう変化したか
などが可視化されていました。

※会場ディスプレイの撮影画像をもとに再構
(他の作品の集計結果)

美術館への来館者分析の可能性
美術館ではアンケートを実施するケースがありますが、通常は満足度や属性などが中心です。
今回のような仕組みを活用すると、
年齢層 × 作品 × 感じた言葉 × 鑑賞の視点
という形で、体験参加者の鑑賞傾向をより深く分析できます。
例えば、
「若い世代はどの作品に反応したのか」
「歴史を見る人が多いのか、素材を見る人が多いのか」
「展示を見る前後で作品の見方が変わったのか」
といったことも分析できそうです。
こうしたデータを展示改善や次回企画に活用できれば、
展示 → 鑑賞 → データ取得 → 分析 → 展示改善
というサイクルも作れます。
美術館におけるAI活用というと、案内や業務効率化をイメージしがちですが、
「人がアートをどう見ているのか」をデータ化する。
今回の展示を見て、そこにも大きな可能性があると感じました。
ArtTech Consultingでは、美術館・文化施設におけるDX、AI活用、サービス企画についてご相談いただけます。



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