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現場レポート|日本のオルタナティブスペース―アートと生活をつなぐ新しい活動のかたち
先日、横浜にあるオルタナティブスペース「Art Center NEW」で、日本各地のオルタナティブスペースが参加するアートフェア「NEW PLATFORM – Alternative JAPAN –」が開催されていたため、会場を訪問してきました。 今回は作品展示を見るだけではなく、9月11日に開催されたトークイベント「衣食住とアート:コミュニティ、飲食、日常の中での実践」にも参加しました。 「オルタナティブスペース」という言葉は、アートに関心がある人でも、美術館や商業ギャラリーと比べると、まだあまり馴染みがないかもしれません。 そこで今回は、実際の展示や運営者の話をもとに、日本のオルタナティブスペースがどのような活動をしているのか、その特徴や課題について整理してみたいと思います。 今回の「NEW PLATFORM – Alternative JAPAN –」には、北海道から沖縄まで13都道府県、23のスペースが参加していました。 (展示作品とパフォーマンス) 1.オルタナティブスペースとは オルタナティブスペースとは、一般的な美術館や商業ギャラリ
HIRONORI YO
3 日前読了時間: 7分


ミュージアム研究|文化戦略で美術館を新設―川口市立美術館
2026年9月12日、川口駅西口に川口市立美術館が開館しました。 JR川口駅から徒歩数分という立地にあり、隣接する川口西公園や川口総合文化センター・リリアなどと一体となって、新たな文化拠点を形成する施設です。 開館記念特別展は「蜷川実花展 はじまりの光」。埼玉県川口市は、蜷川実花が幼少期を過ごし、父である演出家・蜷川幸雄が生まれ育った、彼女の創作の原点にもつながる場所です。 (会場風景) 新しい美術館というと、建物や企画展、所蔵作品などに目が向きがちですが、今回注目したいのは、 「なぜ川口市は今、美術館をつくったのか」 という点です。 そこには、単なる文化施設整備ではなく、川口市の今後のまちづくりを見据えた文化戦略が見えてきます。 川口市に新しい美術館が開館 川口市立美術館は、「継承・共生・育成」を基本理念とし、作品を展示するだけでなく、市民が集まり、学び、交流できる「公園のような美術館」を目指しています。 館内には企画展示室のほか、アトリウム、ギャラリー、ライブラリー、多目的スペースなどが設けられ、美術に詳しい人だけでなく、地域住民が気軽に立ち
HIRONORI YO
4 日前読了時間: 6分


ArtTechトレンド|金融もデザイン×AI活用の時代に
今回は、元銀行員の私から見た、個人の資産管理における「デザイン思考」と「生成AI活用」についてご紹介します。 物価上昇が続く現在、個人の資産を守り、増やしていくためには、個別株や金融商品選びで「当てにいく」ことだけではなく、自分の生活や目的に合わせて、資産全体をどう設計するかが重要になってきています。 ここでいう「デザイン」とは、見た目を整えるという意味ではありません。 目的や制約条件を整理し、複数の選択肢を組み合わせながら、自分に合った仕組みを設計していくことです。 これは、ITシステムや新規事業をつくるプロセスにもよく似ています。 資産運用についても、私は次のような設計プロセスで考えています。 <設計プロセス> ①要件定義:何のために、いくら必要なのかを考える(デザイン思考・哲学思考) ②基本設計:資産・収入・支出・余剰資金を把握する ③詳細設計:ポートフォリオ(※)、コア・サテライト、リスク・リターンを設計する ④テスト:少額でPoC(試行)する ⑤運用:目的に照らしながら定期的に確認し、リバランス・改善する ※ポートフォリオとは、株式、債
HIRONORI YO
5 日前読了時間: 10分


ArtTechトレンド|文化による都市活性化―有楽町の工事現場をアートの舞台に
東京・有楽町駅前で、都市開発とアートを組み合わせた取り組みが進められています。 今回紹介するのは、三菱地所が主催するパブリックアートプロジェクト「YURAKUCHO ART SIGHT PROJECT Vol.05」です。 このプロジェクトでは、美術館やギャラリーではなく、工事現場の仮囲いやビルのファサードをアート作品の発表場所として活用しています。 街の中に作品を展開することで、都市とアートの新しい関係をつくり、日常の中で人々と作品が出会う機会を生み出す取り組みです。 工事現場の「仮囲い」をアート空間に 「YURAKUCHO ART SIGHT PROJECT」は、現代の写真表現を探求・実践するアーティストコレクティブ「TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH」が企画・制作を手掛けるプロジェクトです。 2020年から、新国際ビル、新東京ビル、丸の内パークビルなど、有楽町・丸の内エリアのさまざまな場所で作品を発表してきました。 第5弾となる「Vol.05」では、再開発が進められている有楽町ビル・新有楽町ビル跡地の仮囲いを会場として、
HIRONORI YO
9月8日読了時間: 4分


現場レポート|すみだ五彩の芸術祭から考える、地域文化とアーティストの持続可能性
今回は、東京都墨田区で2026年9月4日から開催されている「すみだ五彩の芸術祭」の関連イベント、「すみだ創造力の学校2026 オープニングクロストーク『地域を知る、創造力をひらく。』」に参加してきました。 以前、墨田区にある江戸東京博物館を訪れた際に開催予定を知りましたが、正直に言うと、「墨田区で新しい地域型芸術祭が始まるのか?」程度の認識でした。 近年、東京都内だけでも地域型の芸術祭やアートイベントは数多く開催されています。そのため「芸術祭」という名称だけでは、なかなか他との差が見えにくくなっています。 しかし、今回実際に現地へ行き、展示を見て、トークを聞いてみると、単なる芸術祭ではなく、墨田区で長年積み重ねられてきた地域文化活動の延長線上にある企画であることが分かりました。 同時に、アーティストが地域で活動を継続していくことの難しさという、かなり重たい課題も提示されていました。 そこで本記事では、 ①地域の歴史や産業とアートをどのようにつなげているのか ②地域型芸術祭が抱える持続可能性の課題 ③アートを企業研修や地域学習に活かし、アーティスト
HIRONORI YO
9月6日読了時間: 9分


ArtTechトレンド|博物館ポータルサイト「ふらっと博物館めぐり」
今回は、2026年2月に公開された博物館ポータルサイト「ふらっと博物館めぐり」をご紹介します。 日本全国には、美術館、歴史博物館、科学館、資料館、動物園、水族館など、さまざまな博物館があります。 文化庁の「博物館総合サイト」でも、全国の登録博物館・指定施設などを調べることができます。 私自身もこれまで多くの美術館・博物館を訪れていますが、施設数が多いため、自分の興味や過ごし方に合った博物館を見つけるのは意外と難しいと感じることがあります。 ネットで情報を探したり、人から聞いたり、実際に訪れて初めて「こんな博物館があったのか」と気づくことも少なくありません。 利用者目線のタグから博物館を探す そこで面白いのが、日本博物館協会が運営する博物館ポータルナビサイト「ふらっと博物館めぐり」です。 一般的な博物館紹介では、 「美術博物館」「歴史博物館」「科学博物館」 といった施設の種類や、地域から探す方法が中心になります。 一方、「ふらっと博物館めぐり」では、 #入場無料 #一人でも楽しめる #カフェもおすすめ #ワークショップが自慢 #写真撮影OK #親子
HIRONORI YO
9月5日読了時間: 3分


ArtTechトレンド|博物館DXの推進事例―MuseumDXから考える文化施設のデジタル活用
今回は、大阪市で取り組まれているMuseumDX(博物館DX)の事例「デジタル大阪ミュージアムズ」をご紹介します。 美術館・博物館のDXというと、収蔵品のデジタルアーカイブ化やVR展示などがイメージされやすいですが、この事例を調べてみると、単に文化資源をデジタル化するだけではなく、「作ったデジタル資源をどのように使ってもらうか」「補助事業終了後もどう継続していくか」まで考えられている点が特徴的でした。 複数の博物館・美術館が参加 「デジタル大阪ミュージアムズ」は、大阪市博物館機構が運営する6つの博物館・美術館を中心に進められています。 参加しているのは、 大阪市立美術館 大阪市立自然史博物館 大阪市立東洋陶磁美術館 大阪市立科学館 大阪歴史博物館 大阪中之島美術館 です。 これら6館が所蔵する資料は、合わせて200万点以上にのぼります。 一方で、各館では扱う資料の種類や管理方法が異なり、収蔵品管理システムも統一されていませんでした。 そこで、すべてのシステムを無理に統一するのではなく、既存の仕組みを生かしながら、各館の収蔵品を横断的に検索・閲覧で
HIRONORI YO
9月2日読了時間: 6分


ミュージアム研究|川崎市の新ミュージアム構想―市民参加型ワークショップから考える
川崎市で進められている「新たなミュージアム」の検討プロジェクトについて、今回は市民参加型ワークショップ「ミュージアム・市民ミーティング」を取り上げたいと思います。 川崎市民ミュージアムは、令和元年東日本台風により大きな被害を受け、従来の施設での活動継続が難しくなりました。その後、川崎市では新たなミュージアムの整備に向けた検討が進められており、その過程で市民の声を集めるためのワークショップが複数回開催されています。 私も2023年10月と2025年7月に開催されたワークショップに参加しました。今回はその参加経験をもとに、ワークショップの運営面で良かった点、十分ではないと感じた点、そして今後さらに良くするための改善案について整理してみたいと思います。 市民がミュージアムを考える場 2023年10月に開催されたワークショップのテーマは、「『あったらいいな!』と思う未来のミュージアムを語り合おう!」というものでした。 参加者は30名程度で、川崎市のエリアごとに5名ほどのグループに分かれ、「新しい美術館はどんなものがよいのか?」について意見を出し合いました
HIRONORI YO
9月1日読了時間: 8分


ArtTechトレンド|新宿コズミック通りに見る、バブル期と現在の文化施策の違い
先日、新宿区の「新宿コズミック通り」を歩いていると、歩道沿いに小さなブロンズ彫刻が並んでいることに気づきました。 鉛筆や絵筆、農作物、キツネ、軍靴など、一見すると脈絡のないモチーフですが、実はこれらは、この地域がかつて「戸山ヶ原」と呼ばれていた時代から現在までの歴史を表現したパブリックアートです。 今回は、この小さなパブリックアートから、バブル期前後と現在の文化施策の違いについて考えてみたいと思います。 1.90年代前後のパブリックアート 新宿コズミック通りには、現在、10点のブロンズ彫刻と28点の陶製歩道ライトが設置されています。 作品には、かつて農地や雑木林が広がっていた戸山ヶ原、陸軍施設が置かれた時代、そして戦後の学校や住宅地へと変化していった地域の歴史が表現されています。 彫刻群そのものの正確な設置年度は、現在公開されている新宿区の資料からは確認できませんでした。 一方、この周辺では1992年に「新宿区景観まちづくり条例」が施行され、同じ年に新宿コズミックセンターが完成しています。 1980年代後半から90年代前半にかけて、日本各地では美
HIRONORI YO
8月31日読了時間: 5分


現場レポート|文化施設による地域活性化戦略(八戸市)
今回は、文化政策を都市政策の一つとして位置づけ、中心市街地の活性化に取り組んできた青森県八戸市を現地視察してきました。 八戸というと、八戸港や水産業、工業都市というイメージが強いかもしれません。しかし、本八戸の中心街を歩いてみると、徒歩圏内に「八戸ポータルミュージアム はっち」「八戸ブックセンター」「マチニワ」「八戸市美術館」という、東京都内でもあまり見かけないタイプの公共文化施設が集積しています。 なぜ八戸市は、これだけ文化施設を中心街につくったのでしょうか。 実際に4施設を歩いてみると、単純な「文化振興」ではなく、文化を使って街そのものを再設計しようとしてきた八戸市の都市戦略が見えてきました。 1.中心市街地の衰退から始まった「文化によるまちづくり」 八戸市は、港湾、水産、製造業、物流などを背景に発展してきた北東北有数の産業都市です。 一方、全国の地方都市と同様、モータリゼーションによる商業施設の郊外化、人口減少、少子高齢化、大型商業施設の閉店などによって、本八戸を中心とする中心市街地の商業機能は徐々に弱くなっていきました。現在の市の計画でも
HIRONORI YO
8月30日読了時間: 11分


ArtTechトレンド|美術館のAI活用事例―東京藝大が行う「鑑賞者の言葉」の分析
東京藝術大学大学美術館で開催されている企画展「藝大式 美術の“ミカタ” ―この夏、藝大生になる―」を訪れました。 本展は、東京藝大の授業を美術館展示として体験する企画で、美術史、実技、鑑賞、素材、保存修復などを、大学所蔵の実作品を通じて学べる構成です。 「本物から学ぶ」東京藝大 今回特に印象に残ったのは、過去の偉人や実際の作品から学ぶことを重視している点でした。 黒田清輝が西洋画を模写した作品から学んだり、国宝絵巻の模写、仏像の模刻を通じて保存修復を学んだりと、先人がどう見て、どう作り、どう表現したのかを実作品から学ぶ内容が多く見られました。 私は京都芸術大学で、主に美術やデザインの歴史的な流れ、社会との関係、アートに対する考え方などを学んでいます。 それと比較すると東京藝大は、 作品を見る → 作り方や考え方を知る → 自分はどう感じるか考える → 自分の言葉や作品に表現する という、制作者視点での学びを重視しているように感じました。 国宝や歴代作家の作品を含む豊富な所蔵品を持ち、本物から学べる環境そのものが大きな強みだと思います。 AIで「ア
HIRONORI YO
8月22日読了時間: 3分


ArtTechトレンド|金融が工芸を支援する時代へ——MUFGのアートプロジェクト
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が、2023年から「MUFG工芸プロジェクト」を展開しています。 テーマは、日本の工芸における**「伝統と革新」**。伝統的な文化や技術を次世代につなぐだけでなく、そこから変化の時代に必要なイノベーションを学ぶことも目的としています。 その取り組みの一つが、若手の工芸作家を支援する「KOGEI ARTISTS LEAGUE」です。 全国の大学や大学院などで工芸を学ぶ若手を対象に、作品を選考するだけではなく、第一線で活躍する作家との交流や学び、さらに日本橋三越本店での展示・販売までつなげています。 2026年は22名のファイナリストが選出され、8月19日から24日まで日本橋三越本店で展覧会が開催されています。 (下記は会場で展示されていた作品) 秋元雄史氏が総合監修 このプロジェクトで興味深いのが、東京藝術大学名誉教授であり、金沢21世紀美術館館長などを歴任してきた秋元雄史氏が、「MUFG工芸プロジェクト」の総合監修を務めていることです。 秋元氏は、工芸を単なる伝統文化としてではなく、日本が長い時間をか
HIRONORI YO
8月20日読了時間: 3分


ArtTech事例紹介|AIで不動産仕入れ判断を高度化―池袋と天王洲を比較した事例
中小の不動産販売会社の経営者の方と、約2億円のタワーマンションを仕入れる場合、池袋と天王洲アイルのどちらを優先すべきか、一緒に検討しました。 相談のきっかけは、 「自分だったら、どちらを買いますか?」 という質問でした。 私は交通利便性などから池袋と回答しましたが、そもそも私は2億円のマンションを購入する想定顧客ではありません。 そこで、個人の感覚だけではなく、市場データも確認した方が良いのではないか、という話になりました。 AIに聞いても「どちらも良い」 社長自身も生成AIを使い、「池袋と天王洲アイルでは、どちらが良いか」と質問していました。 しかし返ってくるのは、 「池袋は交通利便性が高い」「天王洲は住環境や眺望に魅力がある」 といった、どちらにもメリットがあるという回答。 これでは、実際の仕入れ判断には使いにくい。 そこでまず、何を判断したいのかを整理しました。 今回重要なのは「どちらの街が魅力的か」ではなく、 「約2億円の物件を仕入れて販売する場合、どちらの市場の方が仕入れ判断をしやすいか」 という点です。 まず今年の市場状況を確認...
HIRONORI YO
8月20日読了時間: 4分


文化×ビジネス|日本画に学ぶコミュニティデザイン
日本画というと、一人の作家が作品を制作しているイメージがあります。 しかし、実際には画材、専門店、職人、鑑賞者など、さまざまな存在との「対話」の中で作品が生まれています。 日本画は「材料との対話」から始まる 日本画では、岩絵具、胡粉、膠、和紙、箔、筆など、多くの画材や道具を使います。 特に岩絵具は、粒子の大きさや種類、膠や水の量によって、色や質感が変わります。 つまり、作家が一方的に材料を使うのではなく、素材の反応を見ながら表現を調整していく。制作そのものが「材料との対話」になっています。 さらに、日本画材の専門店では、作家が表現したい内容を伝え、専門家が適した画材や道具を提案します。 ここでは、作家の発想と専門家の知識が組み合わされ、新しい表現へつながっています。 浮世絵も「対話」で作られていた こうした構造は、日本画だけではありません。 京都芸術大学の授業で学んだ浮世絵も、絵師だけで完成するものではなく、彫師、摺師、版元、役者、購入者など、多くの人との関係によって作られていました。 作品を買う大衆の反応も、次の作品へ影響します。...
HIRONORI YO
8月20日読了時間: 2分


ミュージアム研究|「美術館という公共」について考える―東京都美術館100周年記念講演会に参加して
東京都美術館で開催された、100周年記念事業の講演会「美術館という公共について」に参加しました。 登壇者は、文化人類学者の松村圭一郎氏、東京藝術大学特任准教授の小牟田悠介氏、東京都美術館学芸員の熊谷香寿美氏です。 講演では、市民が自発的に活動を生み出す美術館の実践を手がかりに、「公共とは何か」「美術館は社会の中でどのような役割を担えるのか」が議論されました。 私自身、これまで公共とは、国や自治体が整備し、市民に提供するものだと考えていました。 しかし今回の講演を通じて、公共とは行政が完成した形で与えるものではなく、人と人、人と組織の関係の中から生まれるものではないかと、考え方が少し変わりました。 東京都美術館の変化 東京都美術館は1926年、実業家の佐藤慶太郎による寄付をもとに開館しました。 現在では代表的な公共施設の一つですが、その始まりは一人の民間人の意思でした。 講演では、大原美術館をはじめ、民間の個人や企業から始まった美術館の事例も紹介されました。 また、福祉の分野でも、孤児救済やハンセン病療養所など、現在では行政が担う活動が、当初は個人
HIRONORI YO
8月3日読了時間: 6分


現場レポート|日本画と江戸染が生んだ、新しい浴衣デザイン
先般、ギャラリー巡りで伊勢丹浦和店を訪れました。美術サロンでは、雑誌『Art Collectors’』の人気企画「完売作家特集」で紹介された作家8名による新作展が開催されていました。 会場では、日本画家の宮下真理子さんが在廊されており、作品について直接お話を伺う機会がありました。 (宮下さんの日本画、競馬場まで行かれてサラブレッドを描かれているとのこと) 特に印象に残ったのが、宮下さんが絵柄を制作し、江戸染の職人が染め上げた浴衣コレクションです。サラブレッドをモチーフにしたデザインは、伝統的な浴衣のイメージとは異なる、現代的で力強い印象を受けました。黒色の作品に描かれた馬の柄は「馬九行久(うまくいく)」と読み、万事が順調に進むという縁起の良い意味が込められているそうです。 (浴衣の図柄) 宮下さんのお話では、かつては日本画家が染物の図案を手掛けることも多かったものの、現在ではそのような機会が少なくなり、過去の図案を繰り返し使用する商品も少なくないとのことでした。 伝統工芸を守ることは、過去のデザインをそのまま残すことだけではありません。現代の作家
HIRONORI YO
7月20日読了時間: 2分


現場レポート|解体予定のビルをアート空間へ――解体・再開発におけるアート活用
赤坂アドレスビル解体祭 現地レポート 赤坂で開催された「赤坂アドレスビル解体祭―AKASAKA ART ACTION―」を訪問しました。会場は、今後解体を予定している赤坂アドレスビルです。通常であれば閉鎖後、そのまま解体工事に入るところですが、今回は建物全体が期間限定のアート空間として開放されていました。 作品展示だけでなく、壁や床へのドローイング、子どもも参加できるワークショップ、トークイベントなどが行われ、解体予定の建物に多くの人が集まっていました。 今回、特に印象に残ったのは、「解体は終わりではなく、始まりである」という考え方です。 会場では、 壊す こねる つくる という流れが紹介されていました。 これは建物の解体だけでなく、自分自身の思い込みを壊し、異なる価値観や素材を混ぜ、新しいものをつくるという意味も含まれています。 解体・不動産開発・アートの共創 トークイベントを聞いて感じたのは、今回の企画が単なるアートイベントではなく、それぞれの事業上の思いが重なって実現したプロジェクトだということです。 解体会社の都市テクノは、解体を単なる撤
HIRONORI YO
7月10日読了時間: 3分


現場レポート|横浜ビジネスパーク(YBP)に見る、35年前からのオフィス×アート
今回取り上げるのは、横浜にある**YBP(横浜ビジネスパーク)**です。 以前にも仕事で訪れたことがある場所ですが、当時の私にとっては「横浜駅からさらに乗り継いで行く、少し不便な場所にある大規模なオフィス街」という印象でした。 しかし今回、改めてYBPを訪れてみると、施設内に想像以上に多くのアート作品が展示されていることに驚きました。 大型の絵画や抽象作品、立体作品、木材や繊維などさまざまな素材を使った作品が、エントランスや廊下、共用スペースなどに配置されています。 さらに屋外にもパブリックアートが設置されており、アートが建築やオフィス空間の中に自然に組み込まれています。 35年前のバブル期に始まった取り組み YBPの第1期工事が完成したのは1990年。今から35年以上前のバブル期に開発されたビジネスパークです。 バブル期の日本では、豊富な資金を背景に、建物を単なる「働くための箱」としてつくるのではなく、建築、広場、緑、デザイン、そしてアートを組み合わせ、より豊かな都市空間をつくろうとする試みが行われていました。YBPも、そうした時代背景の中で生
HIRONORI YO
7月7日読了時間: 4分


ミュージアム研究|鳥取県立美術館から学ぶ、新しい公立美術館の運営モデルと地域文化戦略
2025年3月に新たに開館した鳥取県立美術館について、現地視察をしてきました。今回の視察では、作品鑑賞だけではなく、施設設計や運営方法、地域との連携という視点から見学しました。地方都市における新しい公立美術館のあり方として、多くの学びがありました。 1.鳥取県立美術館について 鳥取県立美術館は、2025年3月30日に鳥取県倉吉市に開館した鳥取県初の県立美術館です。これまで鳥取県では、鳥取県立博物館が美術作品の収集・展示を担ってきましたが、新たな文化拠点として独立した美術館が整備されました。 開館前から全国的に話題となったのが、アンディ・ウォーホル《ブリロ・ボックス》の購入です。 (現地視察時に撮影、購入は5点で1点が展示) 約3億円という購入金額について賛否両論がありましたが、その一方で全国的に鳥取県立美術館の存在を知ってもらうきっかけとなり、結果として全国ニュースでも大きく取り上げられ、賛否はあったものの、美術館開館前から全国へ認知を広げる高い広告宣伝効果を生み出したと言えるでしょう。 美術館のコンセプトは「未来をつくる美術館」です。作
HIRONORI YO
6月29日読了時間: 7分


ArtTech事例紹介|若手日本画家への「視点のコンサルティング」―自然ではなく時間を描く
先日、若手の日本画家の方から、 「もっと自然を感じさせる絵を描けるようになりたい」 という相談を受けました。 作品を拝見すると、花や木、鳥など自然への観察力は十分にあります。 そこで私は技法ではなく、視点についてお話しました。 「自然を描くのではなく、自然の中の時間を描いてみては?」 例えば、 ・雨が降る直前の空気 ・桜が散る5分前の気配 ・朝霧が消える瞬間 ・鳥が飛び立った直後の静けさ そんな時間です。 睡蓮の絵で有名なモネが光や空気感を感じさせるように、時間を感じさせるような絵を描くという視点です。 また、インプットとして、 ・1960年代などの日本人画家の作品や二科展などの作品を効率よく学ぶ方法として、美術館の図書館にて図録を見る(国立新美術館 アートライブラリー) ・自然の表現が豊かな海外の絵本を見る(国立こども図書館) ・自然の中を歩く(東京近郊(狭山丘陵(トトロの森)、奥多摩の御岳山)など) も提案しました。 すると作家さんから、 「自然の中の時間を描く!!まさにそれです!」 という言葉をいただきました。 さらに、 「自然の気配を描き
HIRONORI YO
6月17日読了時間: 2分
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