ArtTech事例紹介|AIで不動産仕入れ判断を高度化―池袋と天王洲を比較した事例
更新日:9月7日

中小の不動産販売会社の経営者の方と、約2億円のタワーマンションを仕入れる場合、池袋と天王洲アイルのどちらを優先すべきか、一緒に検討しました。
相談のきっかけは、
「自分だったら、どちらを買いますか?」
という質問でした。
私は交通利便性などから池袋と回答しましたが、そもそも私は2億円のマンションを購入する想定顧客ではありません。
そこで、個人の感覚だけではなく、市場データも確認した方が良いのではないか、という話になりました。
AIに聞いても「どちらも良い」
社長自身も生成AIを使い、「池袋と天王洲アイルでは、どちらが良いか」と質問していました。
しかし返ってくるのは、
「池袋は交通利便性が高い」「天王洲は住環境や眺望に魅力がある」
といった、どちらにもメリットがあるという回答。
これでは、実際の仕入れ判断には使いにくい。
そこでまず、何を判断したいのかを整理しました。
今回重要なのは「どちらの街が魅力的か」ではなく、
「約2億円の物件を仕入れて販売する場合、どちらの市場の方が仕入れ判断をしやすいか」
という点です。
まず今年の市場状況を確認
今年の不動産市場の状況も踏まえ、池袋と天王洲アイル周辺について、成約件数や在庫状況などを確認しました。
当初は資金回転率に差があるのではないかと考えていましたが、エリア全体で見ると、回転性には大きな差が見えにくい。
そこで次に、
「実際にどの価格帯の物件が売れているのか」
という視点に分析を進めました。
同じ「2億円」でも意味が違う
直近の成約事例や売出価格をAIでリサーチしていくと、池袋と天王洲アイルでは、同じ2億円でも市場の中での位置づけが異なることが見えてきました。
池袋では、80㎡前後でも2億円を超える成約事例があり、2億円という価格が高級タワーマンション市場の中に比較的入りやすい。
一方、天王洲アイルでは、2億円になると市場の中でも上位価格帯となりやすく、広さだけではなく、
高層階
眺望
角部屋
建物のブランド性
室内状態
など、「なぜ2億円なのか」を説明できる商品力がより重要になる可能性が見えてきました。
つまり、
「天王洲で2億円は売れないのか?」
ではなく、
「天王洲で2億円を出してもらうには、どのような条件が必要なのか?」
と問いを変えることで、仕入れ判断に使える情報へと変わっていきます。
経験知をAIで補強する
中小の不動産会社では、経営者や営業担当者が持つ業界経験や、仲介会社などから得る情報が重要な判断材料になっています。
今回も、それらの経験知をAIに置き換えるのではなく、
AIを使って市場データから裏付けを取り、別の角度から検証する
という使い方をしました。
社長が実務の中で得ている情報と、AIで調べた直近の市場情報を照らし合わせながら壁打ちすることで、仕入れ判断の解像度を上げていきました。
今回のリサーチに長期間をかけたわけではありません。
大規模な市場調査ではなく、1時間弱のAIとの壁打ちでも、経営判断に必要な論点や、次に確認すべきデータをかなり整理することができました。
AIの強みは、最初から正解を出すことよりも、短時間で仮説を広げたり、比較軸を作ったりしながら、議論を一段深くできるところにあると感じます。
AIは「答えを出す道具」ではない
今回改めて感じたのは、AIは単に答えを聞くための道具ではなく、
「問いを整理し、経験知を検証可能な形に変える道具」
として使うと効果が高いということです。
今回も、
どちらの街が良いか
↓
どちらが売れやすいか
↓
市場の回転性に差はあるか
↓
実際に売れている価格帯はどう違うか
↓
2億円で売れるために必要な商品条件は何か
と、AIとの壁打ちを通じて問いそのものが変化していきました。
人間が持つ業界経験や現場感覚に、AIによる情報収集・比較・仮説検証を組み合わせる。
その結果、
経験知 → 仮説 → AIリサーチ → 検証 → 意思決定
という、より実務的なリサーチプロセスを作ることができます。
ArtTech Consultingでは、生成AIの導入そのものではなく、経営課題を分解し、AIを使って意思決定の解像度を上げる支援も行っています。



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