ArtTechトレンド|文化による都市活性化―有楽町の工事現場をアートの舞台に

東京・有楽町駅前で、都市開発とアートを組み合わせた取り組みが進められています。
今回紹介するのは、三菱地所が主催するパブリックアートプロジェクト「YURAKUCHO ART SIGHT PROJECT Vol.05」です。
このプロジェクトでは、美術館やギャラリーではなく、工事現場の仮囲いやビルのファサードをアート作品の発表場所として活用しています。
街の中に作品を展開することで、都市とアートの新しい関係をつくり、日常の中で人々と作品が出会う機会を生み出す取り組みです。
工事現場の「仮囲い」をアート空間に
「YURAKUCHO ART SIGHT PROJECT」は、現代の写真表現を探求・実践するアーティストコレクティブ「TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH」が企画・制作を手掛けるプロジェクトです。
2020年から、新国際ビル、新東京ビル、丸の内パークビルなど、有楽町・丸の内エリアのさまざまな場所で作品を発表してきました。
第5弾となる「Vol.05」では、再開発が進められている有楽町ビル・新有楽町ビル跡地の仮囲いを会場として、6名のアーティストによる作品が展示されています。
参加アーティストは、
小林菜奈子
小山泰介
築山礁太
松井祐生(関川卓哉)
三野新
村田啓
の6名。
展示は2025年7月5日からスタートしています。
有楽町という「場所」を作品にする
今回のプロジェクトの特徴の一つが、完成した作品を単に街に展示するのではなく、アーティスト自身が有楽町という場所をリサーチし、そこから得た視点を作品として展開していることです。
参加する6名は、2022年2月から2023年10月まで有楽町ビル10階に設置されていた、有楽町アートアーバニズム「YAU」の活動拠点「YAU STUDIO」で創作活動を行ってきたアーティストです。
それぞれが、有楽町の建築、地下空間、自然、人の動き、都市の記憶など、異なる視点から街を捉えています。
地下空間、屋上の土、建物の記録を作品に
例えば、小林菜奈子氏の「Beneath the Wind」では、有楽町の地下空間を撮影。
オフィス街を吹き抜ける「風」を、人や建物の間を移動する目に見えない存在の比喩として捉え、地下に残る人々の痕跡や記憶を表現しています。
小山泰介氏の「TRACES」では、新有楽町ビルの屋上から採取した土、汚泥、落葉などを使い、歴史的な写真技法であるサイアノタイプによる作品を制作しています。
新有楽町ビルの屋上にはかつて小さなビオトープがあり、皇居から銀座、東京湾へと続く都市の中の自然環境にも着目しています。
築山礁太氏は、有楽町ビル・新有楽町ビルのアーカイブ写真を作品に取り入れています。
松井祐生氏は、建物が解体され街が変化していく有楽町を背景として、新しい都市の「神話」をテーマに作品を制作。
三野新氏は、都市の中に一時的に現れる工事現場の仮囲いそのものに着目しています。
村田啓氏は、街を歩く人々の影と都市空間を組み合わせた作品を展開しています。
同じ有楽町という場所でも、アーティストによって捉え方が大きく異なることが分かります。
YURAKUCHO PARKへと変化する有楽町駅前
有楽町ビル・新有楽町ビル跡地では現在、三菱地所による新たな都市プロジェクト「YURAKUCHO PARK」も進められています。
約1万平方メートルの敷地を活用し、「CHALLENGE」「CULTURE」「PARK」をコンセプトとして、飲食・物販店舗やイベントスペースなどを整備する計画です。
2026年9月には新築工事が始まり、2027年の開業が予定されています。
さらにYURAKUCHO PARKでは、食、ファッション、アートなどを通じて日本文化を国内外へ発信する「JAPA VALLEY TOKYO」も展開される予定です。
再開発の途中も文化発信の場所に
一般的に工事現場の仮囲いは、工事エリアと街を隔てるための一時的な設備です。
YURAKUCHO ART SIGHT PROJECTでは、その仮囲いをアート作品の発表場所として活用しています。
有楽町では、
建物の利用
↓
建物の解体
↓
工事中の仮囲いを使ったアート展示
↓
YURAKUCHO PARK
↓
その先の都市開発
と、街が変化していくそれぞれの段階で、アートや文化に関する取り組みが展開されています。
完成した美術館や文化施設だけではなく、都市が変化していく途中の空間も文化発信の場所として活用する、有楽町の新しいアートプロジェクトです。
YURAKUCHO ART SIGHT PROJECT Vol.05
開催場所:有楽町ビル・新有楽町ビル跡地 仮囲い
開催開始:2025年7月5日
主催:三菱地所株式会社
企画・制作:TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH
ディレクター:小山泰介
協力:有楽町アートアーバニズム YAU
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京「TOKYO CITY CANVAS」



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