現場レポート|35年前から取り組まれてきたアートとの共存
- HIRONORI YO
- 7月7日
- 読了時間: 4分

今回取り上げるのは、横浜にある**YBP(横浜ビジネスパーク)**です。
以前にも仕事で訪れたことがある場所ですが、当時の私にとっては「横浜駅からさらに乗り継いで行く、少し不便な場所にある大規模なオフィス街」という印象でした。
しかし今回、改めてYBPを訪れてみると、施設内に想像以上に多くのアート作品が展示されていることに驚きました。

大型の絵画や抽象作品、立体作品、木材や繊維などさまざまな素材を使った作品が、エントランスや廊下、共用スペースなどに配置されています。
さらに屋外にもパブリックアートが設置されており、アートが建築やオフィス空間の中に自然に組み込まれています。
35年前のバブル期に始まった取り組み
YBPの第1期工事が完成したのは1990年。今から35年以上前のバブル期に開発されたビジネスパークです。
バブル期の日本では、豊富な資金を背景に、建物を単なる「働くための箱」としてつくるのではなく、建築、広場、緑、デザイン、そしてアートを組み合わせ、より豊かな都市空間をつくろうとする試みが行われていました。YBPも、そうした時代背景の中で生まれたプロジェクトの一つです。
もちろん、当時の経済環境や資金力があったからこそ実現できた部分もあるでしょう。しかし、YBPを実際に歩いてみると、単に豪華な作品を購入して並べただけではないことが分かります。
オフィスという日常的な空間の中にアートを取り込み、働く人や訪れる人が自然に作品と接する環境がつくられています。そして35年以上が経過した現在も、これらの作品が空間の一部として存在し続けています。短期的なイベントや装飾ではなく、時間を重ねることで、その場所の文化的な個性や記憶を形成しているように感じました。
現在のアートを活用した都市開発につながる先行事例
現在、東京都内を中心に、大規模再開発やオフィスビルの中にアートを取り入れる事例が増えています。
アートを施設の装飾として利用するだけでなく、企業ブランディング、働く人のウェルビーイングや創造性、地域との関係づくり、コミュニティ形成などにつなげようとする動きも見られます。こうした取り組みは、新しい潮流のようにも見えます。
しかし、YBPを訪れると、日本では35年以上前から、「アートとビジネス空間を共存させる取り組みが実践されていた」ことに気づかされます。今回、私が特に興味を持ったのは、この点でした。
現在、海外の先進事例や新しい都市開発モデルが注目されることが多くあります。しかし、日本国内にも、現在の視点から改めて評価できる先進的な取り組みが数多く存在しているのではないでしょうか。YBPは、その一つの事例だと思います。
ArtTechの視点から考える長期的な価値
YBPの事例を現在の視点から見ると、一つの重要なテーマが浮かび上がります。
「アートは、ビジネス空間や都市にどのような長期的価値を生み出すことができるのか」
アートの効果は、作品価格や短期的な集客効果だけでは測ることができません。
空間の個性をつくること。
その場所の記憶を残すこと。
企業や施設の文化的な姿勢を伝えること。
そして長い時間をかけて、場所そのものの価値を形成していくこと。
こうした効果も、アートが持つ重要な価値の一つだと考えます。
35年以上前に始まったYBPの取り組みは、現在進められている**「アート×オフィス」「アート×不動産」「アート×まちづくり」**を考える上でも、興味深い先行事例です。新しいものをゼロから生み出すことだけがイノベーションではありません。過去に日本国内で行われてきた優れた取り組みを再発見し、現在のテクノロジーやビジネスモデル、社会課題と接続し直すこと。
そこにも、これからのアート×ビジネス、そしてArtTechの可能性があるのではないでしょうか。今後も実際に現場を訪れながら、アートがビジネスや都市、社会の中でどのような価値を生み出しているのかを考えていきたいと思います。



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